朝井リョウ『正欲』を読んで再認識した、「小説でしか味わえない良さ」

こんにちは、読書ブロガーネルです!

 

先日、朝井リョウさんの書いた『正欲』という小説を読みました。

 

めちゃくちゃ良い本で考えさせられるような話だったのですが、これを読んで改めて感じたのは、

「小説でしか味わえない良さって、やっぱりあるよな・・・!!

ということでした。

 

今回はそんな話をまとめていきます。

 

朝井リョウ『正欲』を読んで

まず、朝井リョウさんの『正欲』とはどんな話だったのか。

本書のキーワードは、「多様性」です。もっと詳しくいうと、「性的指向の多様性」です。

 

性的指向の多様性というと、「LGBTの話」かと思ったかもしれませんが、そうではないんです・・・!

そのLGBTには収まらない、更に”マイノリティ”な性的指向をもった人たちが登場する物語です。

 

その登場人物たちが、周囲から様々な扱いをうけます。

そして、そこから湧き上がる感情が、”一人称視点で”リアルに描かれています。

 

この一人称視点というのがポイントなんです。

 

まるで自分がその扱いを受けたような気持ちになり、本を読んでいる一時的な間、「自分も、そのマイノリティ側の人間だったら・・・。」と気持ちが揺さぶられます。

そして、そういった方たちが現実に生きているんだということを、読んだ後にじっくりと考えさせられます。

 

「街じゅうにラブホテルがあるって、なんかほんと、何だよって思っちゃった。」

(中略)

生きていくために備わった欲求が世界のほうから肯定される。

性欲を抱く対象との恋愛が街じゅうから推奨され、性欲を抱く対象との結婚、そして生殖が宇宙から祝福される。

そんな景色の中を生きていたら、自分はどんな人格で、どんな人生だったのだろうか。

「今となってはもう、想像もできないけどな。」

(文庫版『正欲』p.270)

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小説の良さは、「自分とは違う別の人生を追体験」できること

この小説『正欲』を読んで、改めて感じたのは、「自分とは全く別の人生を追体験できることが、小説だからこその良さだな・・・!」ということです。

 

今回の小説が特にそうだったんですが、小説って「1人称視点」で語られることが多いですよね。

 

主人公の目線にたったうえで、周囲に何が起こって、そのときにどういう気持ちを抱いたのか。

そういったことを、”とても事細かに”描写してくれています。

 

それによって、その登場人物におこった出来事が、「自分自身に起こったことのように」感じ、自分ごととして体感することができる。

これが、小説でしか真に味わえない良さだと感じています。

 

漫画や映画でも同じでは?

このように小説を推すと、「漫画や映画でも同じことが味わえるのでは?」という感想を抱くかもしれません。

結論からいうと、これは「No」だと思っています。

 

詳しくは下記の記事にも書いているんですが、小説は「登場人物の感情を、事細かに正確に描写している」という大きな特徴があるからです。

【本と映画の違い】「感情を正確に表現しているかどうか」にある!_アイキャッチ画像

【本と映画の違いとは?】「感情を正確に表現しているかどうか」にある!

2021年1月24日

 

自分がよく知らない世界、よく知らない人生で生きる人物の感情面を、表情や出来事だけで汲み取るのって、じつはめっちゃ困難なはずです。

その点、小説は、登場人物の感情を「長い文章で」「比喩を用いながら」「事細かに表現」してくれます。

 

これによって、小説が一番、「自分がこれまで想像すらできなかった別の人生を追体験できる」んだと思うんです。

今回、朝井リョウさんの『正欲』を読んで、ものすごく強烈にそのことを感じました。

 

自分にとって未知の世界に生きる人のことをよく知るには、「小説が一番」

つまり、自分にとって未知の世界に生きる人のことを知りたい、疑似体験してみたいと感じたとき、一番の手段は小説を読むことなんじゃないかと考えます。

 

教養書などの本では、そういった人たちの「事例紹介」は豊富にあるかもしれません。

しかし、それはあくまで「客観的な視点」のため、どこまでいっても、「今の自分視点」でしかそういった人たちを捉えることができません。

 

一人称視点で、かつ、感情を事細かに表現してくれているものが小説だ、ということを今後もしっかり覚えておきたいと思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

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