こんにちはネルです!
今回は、伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』より、【心に残った言葉】をまとめていきます!
ネタバレではないので、まだ読んでいない方にもおすすめですし、すでに読んで方も復習として読んでいただけると嬉しいです。
- 提案のコツは「軽い条件で承諾してもらう→条件を追加する」
- 「一匹見たら十匹いる」原則は本来おかしい話
- 著者が書きたい話と読者が求めている話は異なる
それでは、順番にまとめていきます!
提案のコツは結論が出た後に追加条件を付け足すこと
まずは、『ジャイロスコープ』の1作目、「浜田青年ホントスカ」からです。
ある結論が出て、取りまとめる直前に細かい追加条件を付け足せば、たいがい呑んでもらえるんですよ
(本文引用)
「う~ん、確かに!」となった一言でした(笑)
特に会社の会議など大勢での話し合いにおいて、これは有効な策だと言います。
なぜなら、長い話し合いの後、ようやく結論が決まったといホッとしている場面ならば、多少のことでは議論をやり直そうという気が起こらないからです。
それによって、少しの条件追加ならば無理にでも呑んでしまうんです。
実際に作中では、主人公がある提案を呑んだ後、「この期間はあまり外に出ず、携帯電話は預からせてくれ」という条件を追加されて面食らうも、結局その条件を呑むという場面がありました。
「すでに引き受けた手前、そこでは断りづらく、結局は条件を呑んだ」と主人公も言っていますが、まさに人の心理を上手についたテクニックなんですね。
フット・イン・ザ・ドア
この場面を読んで思い出したのが、交渉で使われる「フット・イン・ザ・ドア」というテクニックです。
これは、「まずは小さな頼み事を呑んでもらってから、徐々に大きな提案をして承諾させていく」という心理学を使ったものです。
フットとは、そのまま「足」を表していて、足からドアに入って”徐々に”玄関まで体を入れていく、という場面で例えて「フット・イン・ザ・ドア」テクニックという名前が付けられているんです。
たとえば、保険セールスマンが家に訪問した時に、「今日はお話を聞いていただくだけで十分ですので・・・」と言って玄関で話していたら、詳しい話をしたいとリビングに上がることになり、最後にはいつの間にか保険の契約までしていた、というようなものですね。
優秀なセールスマンはこういった心理テクニックを巧みに利用していると言います。
自分の提案をどうしても通したいときは、「まずは軽い条件で呑んでもらってから、少しずつ細い条件を追加していく」というテクニックは時に大きな武器になると思います!
「一匹見たら十匹いる」の原則
続いては、『ジャイロスコープ』2作目「ギア」からの引用です。
「一匹見たら十匹いる、っていう言い方って変だと思いませんか?」運転手は説明を続けた。「その理屈からすると、二匹見たら二十匹いるということでしょうか。それとも十匹のうちの二匹目だと解釈すればいいんでしょうか。そのあたりが曖昧に思えるんですよね」
(本文引用)
「一匹見たら十匹いる。」これはゴキ○リちゃんについての言葉ですね・・・。
この言葉は元々知ってはいたのですが、「そういうもんか。一匹でも見たら、大量にいるんだな」というぐらいで深く考えたことはなかった言葉でした。
でも確かにこの文章を読んでハッとしました!
「二匹目見たら、それは十匹のうちの二匹目なのか、新しいグループの一匹目なのか曖昧じゃないか?」
こんなこと、著者の伊坂さんはよく気づくなと、めちゃくちゃ感動したぐらいですw
そしてこの「ギア」という作品は、この「一匹見たら十匹いる」の原則を”必ず守る”「セミンゴ」という架空の生き物が出てくる話です。
3✕3の正方形の部屋に一匹ずつ詰まっているというセミンゴの話は、一言では言い表せない独特すぎる生物で、その説明部分が個人的にとても好きでした!
ぼくは伊坂幸太郎さんの小説が大好きで、20作品ほどは読んでいるのですが、今回の引用部分のようにこういった日常的に言われる言葉を深く考え抜いた発言がちょこちょこ出てきて、それがたまらなく好きなんです!
伊坂幸太郎自身が「書きたい話」と「読者が求めている話」の差
最後に紹介するのは、本書の最後に収められていた「伊坂幸太郎インタビュー」です。
ちょうど「起承転結のある短編」を書くのが苦手になってきた時期だったんですよね。自分の読者が求めているであろう、「伏線とその回収」「変わった登場人物」「楽しい会話」といったものが全部嫌になって(笑)
(本文引用)
「伊坂幸太郎ファン」の自分としては、この彼の発言を読んでとても衝撃を受けました!
伊坂さんの本は、まさに「伏線とその回収や変わった登場人物・会話」が圧倒的に優れているな、と感じていたのですが、それは実は著者本人が「本当に書きたいもの」とはズレているというんです。
そして、たまに自分が本当に書きたいと感じた作品を書くのだそう。
そうした中で書かれたのが、『ジャイロスコープ』の「ギア」だったそうです。
この作品はものすごく独特な世界観で「どこか伊坂幸太郎らしくないな~」と漠然と感じていたのですが、まさか、こういった作品こそが伊坂さんの本当に書きたい作品だったとは!
実際に著者の本をいくつも読んでいると、めちゃくちゃ面白い!というものが大半ですが、「あれ?なんかこれはあまり自分に合わない話だな・・・」と感じるものも少なくないんですね。
そういった作品の多くは、「読者が欲している作品ではない」と著者が知った上で書き上げた作品だったと知って驚きました。
具体的には、
- ゴールデンスランバー
- モダンタイムズ
- SOSの猿
などがそれに当たります。
本当に申し訳ないことに、これらの作品はまさに自分的には評価は高くないものだったんですよね・・・。
作家業として、「自分が書きたいものと読者が本当に求めている作品の違い」を苦しみつつも多種多様な作品を書き続けている伊坂幸太郎さんの力量に、改めて凄さを感じた場面でした!
まとめ
今回は、伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』より、心に残った言葉などをまとめていきました!
特に最後のインタビューは衝撃的。
伊坂幸太郎ファンの人には、ぜひここだけでも読んでみてほしいです!
- 提案のコツは「軽い条件で承諾してもらう→条件を追加する」
- 「一匹見たら十匹いる」原則は本来おかしい話
- 著者が書きたい話と読者が求めている話は異なる
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!