先日、伊坂幸太郎『魔王』を読了しました!
そこで、この本の簡単な感想と、「心に残った文章・名言」をまとめていきたいと思います!
伊坂幸太郎『魔王』感想
この本は、「政治」についての話でした・・・!
日本の選挙の投票率の低さや、保身に走る政治家、さらに、「憲法9条」についての話が沢山出てきます。
それらの政治的話題について、登場人物のセリフが核心をついているものばかりで、政治について深く考えさせられるような内容でした!
エンタメ小説というよりは、政治について深く考えさせられるような文章が多く、勉強にもなるような本でした。
一方、「物語の起承転結」は弱かったので、刺激のある物語ではないことに注意が必要です!
心に残った名言「3選」
それでは、この本の中から特に心に残ったセリフを3点ピックアップしてまとめていきます!
今回紹介する箇所だけ読んでもネタバレにはならないので、未読の方もぜひ確認してみてくださいね!
相手を言い負かして幸せになるのは”自分”だけ
政治に関する話には、熱い議論がつきものですよね。
それに対し、主人公の弟が言ったのが、以下のセリフです。
「『今まで議論で負けたことがない』とか自慢している奴を見ると、馬鹿じゃないかって思うんだよね。」
「俺は議論が強い」とか、「自分は論理的思考が優れている」と思い込んでいる人ほど、つい言葉で相手を丸め込もうとしてしまいがちですよね・・・。
議論で勝っても、デメリットのほうが大きい
でも、こうやって議論で相手を打ち負かすことは、デメリットは大きくても、メリットは少ないのです。
「相手を良い負かして幸せになるのは、自分だけってことに気づいてないんだよ。理屈で相手をぺしゃんこにして、無理やり負けを認めさせたところで、そいつの考えは変わらないよ。場の雰囲気が悪くなるだけだ」
引用:『魔王』
たとえ相手を論破しても、
- 相手の考えは変わらず
- 場の雰囲気が悪くなる
この2点は、人と議論するときには意識するべきだと感じた文章でした!
「もういっそのこと、多数決じゃなくていいんじゃないの?」
このセリフは、国の政策に関する話をしている場面です。
「もういっそのこと、多数決じゃなくていいんじゃないの?」
長い期間をかけて政治家が議論したにも関わらず、結局選挙によって否決され、なにも変わらず時間だけが過ぎていく・・・。
そんな国の状況に対して、ある女性が言います。
「だからー」女が口を尖らせる。「もう、いっそのこと多数決じゃなくてもいいんじゃないの?わたしなんかさ、そう思っちゃうよ。誰か、びしっと決めてくれたら、ついていくからさ」
私はこの箇所を読んで、「確かに!」と感じつつ、「こういった考えを誰もが持つようになった時に、独裁者が出てくるってことか・・・」と感じました。
ナチス・ヒトラーの全権委任法
歴史的に有名な、ヒトラーは、「全権委任法」という法律を制定させた、ということを覚えています。
これは、「私が、すべての決定を独断で行う」という、なんとも強烈な法律です。
これがあったからこそ、ナチス政権は、悲惨な政治をおこなっていくことになったんですね。
そして、先程紹介したような「誰かがもうびしっと決めてくれば、後をついていきます!」という態度こそ、こういった政治を生み出す危険があるのではないでしょうか。
実際にこの本には、そういった「ビシッと国を引っ張ってくれる若手政治家」が登場するんですね。
伊坂幸太郎さんははっきりと語らなかったもののの、「多数決を否定することにも危険があるよ」というメッセージを発しているように感じました・・・。
多数決で勝つ巧妙なテクニック
最後に紹介するのは「多数決の勝ち方」に関する話です。
多数決について考えるために、「問題」を作ったので、ぜひ考えてみてください。
あなたは多数決において、「A」という案を採用したいと思っています。
しかし、事前調査では
- 「A」の賛成派:40%
- 「A」の反対派:60%
となっており、このままでは多数決で負けてしまいます。
こんなとき、あなたならどうやって「A」を多数決で勝てるようにしますか?
「A」案の賛成派が半分を超えていない以上、このまま多数決をおこなったら負けてしまいますよね。
・・・しかし、それは2つしか候補がないからです。
選択肢を意図的に増やしたら?
もし、以下のように選択肢「C」を増やしたらどうなると思いますか?
- 「A」案:自分が採用させたい案
- 「B」案:A案とは真逆の案
- 「C」案:B案と似ている案
「A」に反対派だった60%の人が、「B」案と「C」案に30%ずつバラけた場合、40%を獲得した「A」案が勝つことになるんです!
これこそが、「多数決で勝つ巧妙なテクニック」です。
つまり、「自分の意見に反対する案を”あえて”複数出すことで、反対意見の票をバラけさせて、多数決で勝てるように調整する」わけです!
本書の終盤で、この手法についての話が取りあげられていました。
「多数決は正義」と考えていると、頭の良い人に巧妙に票を操作され、思わぬ結果を招きかねないといことを忘れないようにしたいですね!
まとめ
今回は、伊坂幸太郎『魔王』の感想と、心に残った箇所を3点まとめていきました。
政治に関して強い思想を持っている人こそ、この本で色々な意見を取り入れる大切さに気づけると思います!
また、私のように政治や歴史に弱い人でも、この本によって考えるきっかけが得られる可能性も高いと思います。
少しでも気になった方は、ぜひ手にとって見てください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!