「今の時代に最強なのって、『ITと経営企画』の2点を持った人では・・・!」
そう感じさせてくれたのが、今話題の『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』です。
システム系の職種の方、そして経営層の方には強くおすすめの本です。
「なぜ、こんな超大企業が”2度も”システムトラブルを起こしたのか?」
そう感じた私は、早速この本を最後まで読んでみました。
そして得た答えは、「ITを真に理解している経営層がいなかったから」です。
今回は、その詳しい説明と、「なぜ、ITスキル×経営企画が最強なのか?」という話をまとめていきます。
【目次】
システムへの時間・お金の投資を甘く見る経営層
冒頭で、みずほ銀行は”2度”大規模なシステム障害を起こした、と書きました。
なぜ、1度ミスをしたのにまた同じような失態をおかしたのか。
それは、「経営層が、システムへの投資を渋っていた」からなんですね。
みずほ銀行は2002年、一度目の大規模システム障害を起こしました。
それを受け、システム品質対策などの手は打ちました。
しかし、メインシステム自体は「長年うまく稼働している」という理由から、まだ安全だと診断していたのだそう。
そして経営層の判断としては、「何かなければ、4,000億円という投資は決断できない・・・」としていたのです。
確かに、今は問題なく動いているシステムに対して、いきなり4,000億もの投資をするのは難しいのはわかります。
システムへの投資は、人件費が大量にかかることもあり、投資額が莫大になりやすい。
だからこそ、経営層はその投資に渋ってしまいやすいのです。
「今は問題ないから、あと数年は様子を見よう。」
この経営層たちの姿勢こそが、大きな問題の1つなんですね・・・。
ITエンジニアの説明が全く理解できない
続いて、経営層が「ITの知識が乏しすぎる人ばかり」という問題がありました。
みずほ銀行の経営トップたちの態度が、以下のようなものだったと、著者は指摘していました。
「システム部門に説明を求めても、言っていることが全くわからない。」
「経営層がわかる言葉で説明ができない時点で、彼らに問題がある。」
この気持ちはすごくわかりますよね。
著者はこういった態度を受け、「専門外の人にもわかるような説明力の指導をすることが、経営トップの任務だ。」と指摘していました。
最低限のIT知識がないと、話は進まない
上の指摘はもっともだと思います。
しかしそうは言っても、、、「最低限のIT知識はないと、話なんて進まないだろう・・・」と感じる部分でした。
たとえば、「データベース」「クラウド」「サーバー」などなど。
このような知識すら、実は良くわかっていない、という経営層も多いのではないでしょうか。
IT担当者からしたらごくごく基本的・当たり前であろうこれらの知識も、1から解説していては、本題にはいれない。
たまったもんじゃない、という気持ちになることも容易に想像がつきますよね。
「ITは難しいから、彼らに任せときゃ良いんだ。」
こんな態度で、最低限のITスキルを身に着けない経営層が大半を占めていたことが、みずほ銀行の大きな問題だった、と感じるのです。
システムはサクッと作れるものではない
つい、自分も考えてしまいがちですが、
「今の時代、システムなんてサクッと作れるだろう。」
あなたも、こう考えていないでしょうか。
今や、スマホでアプリを入れれば、色々な機能が利用できる。
こういった”ユーザーの経験だけ”をしていては、システムなんて簡単だろうと感じてしまうのも、無理がないと思うのです。
自分で苦悩を味わった人は強い
だからこそ、「システムづくりに1度でも参加したことがある。」という経験を持った人材は、とても貴重なのではないでしょうか。
「どれくらいの規模・機能のシステムなら、時間・お金はいくらかかるのか。」
この勘所がわかっている人は、これからますます求められるのだと思います。
本書では、以下のような話が非常におどろきました。
「メガバンクの勘定系システムは、全体で1億行。1,000のエンジニアが10年間開発を続けて、ようやく終わる規模」
おそらく、大規模システムの開発に1度でも関わったことがある方なら、これぐらいはなんとなく想像がついたことでしょう。
しかし、ITに詳しくない人は、この数値にとても驚いたのではないでしょうか。
だった、1000人の作業者を10年間雇い続ける必要があるんですよ・・・。
それぐらい、システムの開発というのは、想像以上に大変なこと。
そして、それを真にわかっているのは、システム開発の経験者だけなのではないでしょうか。
一度もプレイしたことのないスポーツの監督になるのは果たして正しいか?
「自分たちの本業はマネジメントだ。」
「プログラミングなんて、技術者たちにやらせれば良い。」
ほとんどの経営層は、こう考えていることでしょう。
システム化の重要性が叫ばれている現代でも、こんな態度なんです。
このような方たちに、以下のような問いかけをしたいです。
「一度もプレイしたことがないスポーツの監督をやっている人がいたとする。あなたはこれが正しい構造だと思うか?」
私には、この構造は間違っているように見えて仕方がないです。
そして、この構造が、今多くの日本企業で起こっている。
つまり、システム開発について何も知らない経営層が、IT化に対して指示を出しているんですね。
この状況はいずれじわじわと崩壊していくのでは?と感じます。
「やっぱり、システム開発の経験者は適切なIT投資判断ができるよね。」
そう感じる社員が、どの企業も今後少しずつ増えていくのではないでしょうか。
そして、徐々に「ITスキルと経営マネジメント」の両方をもった人材が、活躍の場を広げていくことになる。
この本を読んで、そう強く感じました。
まとめ
今回は、『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』より、「ITスキル×経営マネジメント」の人材がこれから活躍する、という話をまとめてきました。
レビューにもある通り、この本は、「いかに大規模システムづくりが大変か。」ということが主旨ではないです。
「なぜ、こんな大規模なシステム障害が2度も起きたのか。」
その原因を色々な角度からフラットに分析している本となっていました。
もしかしたらITエンジニアの方々が読んでも、物足りない部分はあるかもしれません。
しかし、経営層など高い視点から事件を追えるという点で、勉強になることは間違いないと思います。
経営層の態度を読むことで私は、「幹部の層にも、ITスキルを持った人材がこれから増えていくのでは?」と感じられたのです。
ぜひ、あなたもこの本を一度読んで、考えてみてください!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!