- 「俺らの会社は、人事たちが何も見えていない。」
- 「人事評価を、きちんと見直して欲しい。」
- 「なんであんな奴が出世して、俺みたいに仕事ができる人が平社員止まりなんだ!!」
どこの会社・組織でも、こういった不平・不満を抱いている人は一定数いるでしょう。
「人事制度」というのは、”表向きは”評価基準をきちんと設けて、「公平に評価を下していますよ。」なんて感じをだしています。
しかし、人が人を評価する以上、真に公平な判断は下せないというのが実態でしょう。
もしかしたらあなたは、
「真に公平な評価がつけられる制度があったら、皆が幸せなのに・・・!」
なんて考えているかもしれません。
でも、本当に「公平な評価」が下されることが、人々にとって良いことなのでしょうか?
今回は、そんな話をまとめていきます!
- 人は不平等を嫌うが、「真に平等な社会」は”地獄”である
- ”公平でない”からこそ、人は自尊心を保っていられる
- 脳に汗をかきたい方は、本書を強くおすすめ!!
参考にする本は、小坂井敏晶『責任という虚構』です。
人は不平等であることに、不満を抱く
部活動や会社に所属したことが一度でもある場合、こんなことを感じたことはないでしょうか。
「なんで、あいつのほうが自分より評価されるんだ?」
「もっと公平な評価をしてくれよ・・・。」
こんな感情を抱くことは普通のことで、誰でもこの種の不満を抱いたことがあるでしょう。
「人が人に対して評価を下す」という関係である以上、”誰もが納得できる評価”というのは、本質的に不可能であるからです。
どれだけ「評価基準」を明確にしていても、
- その評価基準は適切か?
- 評価基準の実績への照らし合わせは適切か?
- 職種やポジションによる評価の違いは適切か?
こういった批評はいくらでも出てきてしまうからですね。
特に、職種が異なる場合には、この評価を公平にする、ということ自体が非常に難しい問題です。
「営業の仕事と、経理の仕事で、成果に見合った公平な評価をどうすべきか?」
こう考えると、実質的に「公平は不可能だな。。」なんてことがわかってきますよね。
契約を勝ち取ってくるのは営業の人でも、それら営業のメンバーを支える経理など事務方の人がいないと、組織というのは回らない。
だから、「会社に利益をどれだけもたらしているか?」なんて基準も、一見公平に見えても、全員に対してこの制度を適用することはできないわけです。
真に「公平な社会」を想像する
では、ここで”想像”してみてください。
もしも、何らかの理由で、「誰もが納得できる、真に公平な社会」が実現されたとしたら・・・。
よく努力し、成果をあげているひとだけが、良い給料の会社に入る。
仕事で評価基準に対して良い成果を上げている人が、その順通りに出世していく。
「評価が公平ではない」ということに不満を抱いていた人にとって、この状況は理想郷のような話のはずですよね。
・・・しかし、上記のような状態をリアルに想像してみると、本当にそれは幸せな社会でしょうか。
「正義」という地獄
この記事で言いたかったのは、「本当に公平な社会というのは、幸せな社会であるとは言えないよ・・・。」ということです。
以下、『責任という虚構』から引用します。
同期に入社した同僚に比べて自分の地位が低かったり給料が少なかったりしても、それが意地悪い上司の不当な査定のせいならば自尊心は保たれる。序列の基準が正当でないと信ずるからこそ人間は劣等感に苛まれないですむ。
(『増補 責任という虚構』 p.368)
「俺の地位が低い原因は、評価をつける奴の、人を見抜く能力が低いことだ。」
これは、普通の社会では、真実を含んでいると思います。
しかし、今仮定しているような「真に公平な社会」では、だれもが明確にわかるように「評価が公正」なのです。
その公平な社会において、低い地位しか与えられないものは、どう感じるのでしょうか・・・?
地位が低いものはつまり、組織からこんなことを言われているのと等しいのです。
「公平な判断の元評価した結果、あなたは他人よりも能力が劣っています。そのため、低い給料・低い地位で働いていただくことになります。」
真に公平な社会では、こんなことが起こるわけです。
こんな社会に、あなたは生きたいと思いますか・・・?
まとめ
たしかに、人間社会は「不公平」だと言えます。
そして、その不公平さをなくそうと、努力することも重要です。
しかし、「本当に100%の公平な社会」というのは、先述のように、「想像して見るだけでも、生きづらさMAXの社会」なんですね・・・。
「評価制度に一部納得はできないこともあるけど、人がつくった制度だし、ちょっとした”不公平さ”は仕方がない。」
これぐらいの感覚でいられる今の社会のほうが、よっぽど幸せだと考えることができるんですね。
- 人は不平等を嫌うが、「真に平等な社会」は”地獄”である
- ”公平でない”からこそ、人は自尊心を保っていられる
- 脳に汗をかきたい方は、本書を強くおすすめ!!
今回は、『責任という虚構』を読んで、深く考えさせられる部分があったので、本記事にまとめてみました。
この記事で、なにか少しでも気づきや発見などを得てくれたらとても嬉しいです!
↑この本自体は、本記事のような内容がメインではなく、主題としては「責任概念というのは、実は人が作り出した虚構でしかないよ。」というものです。
バッキバキに、読み応えのある本で、「文章と格闘しながら読みすすめるような本」です。
「脳に汗をかきながら読む」という感覚が好きな方には、心からおすすめしたい本です!
ちなみに、著者の小坂井敏晶さんの本は、どれも読み応えがあるので、読書好きの方にはどれか一冊はぜひぜひ読んでみて欲しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!